海外の料理番組や、イギリス・フランスを舞台にした小説、映画の朝食シーンなどで時折目に留まる「シポラタ(Chipolata)ソーセージ」。
「名前は聞いたことがあるけれど、普通のウィンナーと何が違うの?」「スーパーにあるもので代用できる?」という疑問を持つ方に向けて、その正体と、味の決め手となるハーブの秘密、そして家庭で楽しめる本格レシピまでを詳しく解説します。
シポラタソーセージと「シャウエッセン」の決定的な違い
日本でソーセージといえば、真っ先に思い浮かぶのは「シャウエッセン」や「アルトバイエルン」ですよね。
しかし、シポラタはこれらとは全く別ジャンルの食べ物です。
① 「生」か「加熱済み」か
最大の差は「生」であるかどうかです。
- シャウエッセン: 工場でボイル・スモーク(燻製)されており、既に火が通っています。極端な話、そのままでも食べられます。
- シポラタ: 豚の挽き肉とスパイスを羊腸に詰めただけの「生肉」の状態です。食べる直前に家庭で焼き上げることが前提となっています。
② スモーキーさか、ハーブの香りか
- シャウエッセン: 燻製の香ばしさが魅力で、ご飯のおかずやおつまみにぴったりです。
- シポラタ: 燻製は一切しません。その代わり、後述する「タイム」や「セージ」といったハーブをたっぷり効かせ、爽やかで肉本来の旨味を強調した「洋食のメイン」としての味わいです。
味の決め手!「タイム」と「セージ」ってどんなもの?
シポラタの解説で必ず登場するのが、タイムとセージという2つのハーブです。
これらは「肉料理の相棒」として西洋では欠かせない存在ですが、具体的にどんな役割があるのでしょうか。
肉の臭みを消す「タイム(Thyme)」
タイムは、非常に小さな葉を密集させるハーブで、清涼感が強いのが特徴です。
- 香りの特徴: スーッとする爽やかさがあり、少し樹木のような(ウッディな)香りがします。
- 役割: 豚肉の脂っぽさや生肉特有の臭みを抑え、一口食べた時に鼻に抜ける清潔感を演出します。
肉の旨味を引き立てる「セージ(Sage)」
セージは、少し厚みのあるベルベットのような葉を持つハーブです。
- 香りの特徴: よもぎに似た、少しほろ苦く力強い「薬草」のような香りがします。
- 役割: 脂のしつこさを中和し、肉の旨味をどっしりと支える土台のような役割を果たします。
【豆知識】シポラタの中で光る「二人の合体技」と再現のコツ
この2つが組み合わさることで、シポラタは「単なる肉の塊」から「洗練された一皿」へと進化します。
- タイムが「引き算」: 豚肉の生っぽさやしつこさを消し去る。
- セージが「足し算」: 豚肉の甘みと旨味をグンと引き立て、高級感を出す。
タイムもセージも、実は身近な存在です。
スーパーのスパイスコーナー(S&BやGABANの小瓶)に行けば、150円〜200円くらいで手に入ります。
もし「シポラタが売ってないけれど、あの味を楽しみたい!」と思ったら、普通の豚ひき肉にこの2つの粉末を混ぜて焼くだけで、一気に「シポラタ風」の味わいに近づきます。
ソーセージの形にこだわらなければ、これだけで本格的な欧風ハンバーグやミートボールが作れてしまうんです。
日本のスーパーで買えるもので代用できる?
残念ながら、日本の一般的なスーパーで「シポラタ」が並んでいることは稀です。
もしレシピで必要になった場合は、以下の代案を検討してみてください。
- 「生ソーセージ」として売られているもの(最適)
精肉コーナーの端に、トレイに入った加熱前の白いソーセージがあればそれが一番近いです。 - ジョンソンヴィル(レモン&ペッパーなど)
燻製が弱めで、ハーブの香りが強い本格的なソーセージです。 - 普通のウィンナーに「追いハーブ」
普通のウィンナーを焼く際、フライパンにスパイスコーナーで買った乾燥タイムやセージを振りかけるだけでも、雰囲気はグッとシポラタに近づきます。
失敗しない!シポラタの「美味しい焼き方」
「生肉」を詰めたシポラタは、焼き方が非常に重要です。
- 弱火〜中火でゆっくり: 強火だと中まで火が通る前に皮が破け、美味しい肉汁がすべて逃げてしまいます。
- 油をひかずに転がす: ソーセージから脂が出てくるので、それを活用しながら全体がこんがりするまで10分ほどかけてじっくり焼きます。
- 最後に少し強火: 仕上げの1分だけ火を強めると、皮がパリッと仕上がります。
目的別!シポラタソーセージの本格レシピ
シポラタを手に入れたら(あるいはひき肉とハーブで作ったら)、ぜひ挑戦してほしい料理をご紹介します。
【イギリス風】ピッグス・イン・ブランケッツ
イギリスのクリスマスには欠かせない、子供から大人まで大好きなメニューです。
- 作り方: シポラタ1本に、ロングタイプの薄切りベーコンをらせん状に巻き付けます。200℃のオーブンで20分、ベーコンがカリカリになるまで焼くだけ。ベーコンの塩気とシポラタのハーブが合わさり、最高のおつまみになります。
【フランス風】シポラタとレンズ豆の煮込み
シポラタから出る旨味たっぷりの「ダシ」を味わう一品です。
- 作り方: フライパンでシポラタを焼き、一度取り出します。そのフライパンで玉ねぎと人参を炒め、洗ったレンズ豆と水を投入。シポラタを戻し入れ、豆が柔らかくなるまで煮込みます。タイムとセージの香りがスープに溶け出し、レストランのような奥深い味わいになります。
まとめ:シポラタは「肉を料理として楽しむ」ためのもの
シャウエッセンが「手軽で完璧な完成品」だとしたら、シポラタは「家庭でじっくり火を通して完成させる肉料理」です。
ハーブ(タイム・セージ)の香りを纏い、じっくりと焼き上げられた細身のソーセージ。
その一口は、いつもの朝食や夕食を少し特別な時間に変えてくれるはずです。
もし精肉店や輸入食品店(成城石井やコストコなど)、またはオンラインショップでその姿を見かけたら、ぜひ一度手に取ってみてください。もし見つからなければ、スパイスコーナーで小瓶を買って「自作」してみるのも楽しいですよ!